中村香

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ある舞台を観て美術の世界に進みたいと思った…
という中村香は、美大に進学し、油・アクリル・版画など、
今まで色んな表現方法を学んできた。
昨年は、自身初の個展を開催するまでになったが、
それでも「自分にしか出来ない、自分らしい表現方法は何か」
を模索し続けていた。

彼女と出会ったのは、ちょうどそんな頃だった。
銀座の個展会場で、彼女は柱に隠れるように佇み、
自分が描いた数点の絵の中に同化していた。
しかしそれとは対照的に、白い壁に並べられた作品は
一言では表せないほどの歩幅を感じさせたし、
添えられた「君 想う」という作品名がいつまでも頭に残った。

まだ「無」なのかもしれないけど、
内に秘めた何かが今にも噴出しそうな…
そんな強い意志を感じて、2時間後には会場に逆戻り、
「取材させてほしい」と申し入れた。
そのときのキョトンとした魅力的な彼女の顔は今でも忘れられない。

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始まった取材で、案の定、中村香は
言われるまま書かれるままで終わるような
浮き足立ったところはなかった。
床にペタンと座って絵を描く自由なスタイル、
机上にある古びた「百人一首」の本、
集められた絵の具や紙、布や色々な素材、
その全てには、今の彼女に繋がる意味があった。
まるで頭の中を泳ぐように揺れる素材やデザイン、
色と言葉の感覚は、やがて「コラージュ」となって集約され、
BonAppetit-5の表紙を飾った中村香の作品は評判を博した。

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クリスマス、バレンタイン…
彼女は幾度か私にカードを贈ってくれた。
色も質感も違う紙を組み合わせ、
和紙をちぎり、布にレース、糸、アクリル絵の具…
それは駆使する素材が増えるほど、
自分らしさを自由に表現するのを
愉しんでいるかのようでもあったし、
心に響き伝わる作品は贈り贈られるカードに相応しいと思った。

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今回、彼女が創ったLa seule carteは、
数多のカードにある不足感を払拭する意味も込めている。
「ちょっと特別感があって、
伝えたいことが自在に書き綴れる新しいカタチは?」
「何人かで一緒に言葉を贈りたいときにも
使えるようなカードがほしい!」

彼女は言う。
「一つ一つに想いを込めているので、
同じデザインであっても全く同じに作りたくはないし、作れないので、
唯一のものとして大切な人に贈って喜んでもらえるものを
作りたいと思う」

そして出来上がったカードは、
いつまでも記憶に残るだろうカタチになった。
彼女が創ったカードに贈り手の想いが重なって出来上がる、
小さな手紙本のように…。
中村香が創作を続ける理由が、理解できたような気がする。

text by Fumie Nagai

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*La seule carte(ラ・スール・カルト)
 
 = たった一つのカード。同じものは二つとない一点ものです。
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by bonappetit2007 | 2009-06-26 16:13 | 作家
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