カテゴリ:作家( 13 )

宮本紀子  石と銀の装身具 

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素朴で、美しいもの。
見て、身に付けてうれしいもの。
身に付けた人が自分だけのアクセサリーとして
使っていただけるモノをと考えてひとつひとつ製作しています。
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「その石をなるべく活かす形を考えています」
装身具をつくるとき、石や金属の破片をじーっと見て考える、という宮本紀子さん。
宮本さんがつくる装身具は、オーダー品以外は、はじめにデザインがあるのではなく、
目の前の石や金属の欠片を活かすことから生まれる。

「私が選ぶ石は、宝石用のクリアーなものは少なく、クラックが入っていたり表情があるものが
多い。どの面をトップにするかで雰囲気が変わるし、なるべく大きくきれいに見える面を
出せるように考えます」

美しい光を放つ角度、針のような内包物が入っているものは、
上手くカタチの中に入るようにと考えをめぐらせる。
宮本さんは、石の中にどんな魅力が隠れているのかを楽しんでいるようだ。

「研磨する前は、石は曇っているので中身が分からないけれど、研磨していくと、
思いがけない模様が現われたり……それは運というか、お楽しみです(笑)。
構造上に無理があれば、石の形を若干整えたり、シルバーの厚みを変えたり、
デザインも、よりしっくりくる形に変更することもありますよ」

石の中から何が表れるか分からない作業。それだけに、制作は試行錯誤の連続だ。
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金属は、板状・棒状の銀をデザインに沿って糸鋸でカットし、
バーナーで熱して柔らかくして、曲げたり叩いたりをくり返す。
「板状や棒状の銀を切ったり、やすったり、穴を開けたり、叩いたり、
ロウ付け(銀と銀を着ける作業)したり、磨いたり、それに石留をしたりして作ります。
金属なので硬いし、ひとつひつの工程に時間が掛かりますが、
硬いものが自分の手で加工できるのは楽しいです」

 石と銀、双方の存在感を失うことなく、ひとつの作品に仕上げるためには、培った経験と勘と感性が試される。
「存在感がありつつ、身に着けたときに馴染みが良いかどうかが大切ですね」
宮本さんのオリジナリティと身に着ける人との関係は、無理なく調和する石と銀に似ている。
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                            text by Fumie Nagai
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by bonappetit2007 | 2012-11-01 22:20 | 作家

HARRYS 

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彼女のアトリエは、東京の下町にある自宅の一室。
築50年の懐かしさが漂う家の中に入ると、
ガスボンベや剥き出しの大きなダクト、ガスバーナーなど、
制作のために必要な設備や道具類が、目に入る。

無骨な機器類とは対照的に、部屋のあちこちには、
綺麗な色を残したドライフラワーが、飾られている。
「生花よりも、ドライフラワーが好きなんです」
そう言って、ガラスケースに入れて大切にしている
植物の葉脈を見せてくれた。


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彼女のつくる細かな網目状の作品は、
一見、何かの型にガラスを流し込んでつくっているかのように見える。
しかし、それは、まったくの見当違い。
実際につくるところを見せてもらうと、
気の遠くなるほど緻密な作業に、心底驚かされた。

「材料は、細いガラス棒です。
それを、炎で溶かして、ピンセットで、くるっと返して、丸をつくります。
一つ一つつくった丸を、割れないように、しっかりと溶着します。
それを繰り返すことで、網目状にしているんです」

そうして、できた作品は、琴さんが大切にしている
葉脈のドライフラワーを、どことなく彷彿とさせる。

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琴さんは言う。
「何かの拍子で偶然いいものができたとしても、
もう一度同じようにつくれるとは限らないし、
つくらないのが作家だと思う。
だから、『なんとなくできちゃった』は、イヤ。
それに私が今、つくっているものは、誰かが身につけたり、
日常生活の中で使ったりするもの。
偶然できた歪みが、どんなに美しくても、
簡単に壊れるようでは、ダメだと思うんです」


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だから、彼女は、強度もすべて計算した上で、
あえて不揃いな丸をつくり、わざと歪みを持たせる。
それによって、はじめて繊細さと強さが同居した、
美しい作品が生まれるのかもしれない。


HARRYS 土屋琴さん 「繊細さの中に同居する強さ」
BonAppetit-10(2011年6月発行)より改変

text by Tomomi Igarashi

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by bonappetit2007 | 2011-08-01 18:18 | 作家

渡辺貴子

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家、花、風車…? ひとつ1つの作品は、
まるでどこか別の世界からやってきたように抽象的で
「何」と一言で表すのは難しい。
けれども、白色の陶で飾られた空間に身を置いていると、
しんと静かな空気がその場を包み込み、清らかな心地になるのだった。


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作品をつくるのは、渡辺貴子さん。
陶芸に出会ったのは、留学先のイギリスで通った
地域の美術講座だったという。
「最初は、つくったものを器や花瓶として使えるのが楽しかった」
と実用的なモノとして興味を抱いたようだが、
その後に通ったアートスクールで
想像もしなかった陶芸の可能性を知る。

「2つものをくっつけて1つものを、描きなさい」
というシンプルで難解な課題。
貴子さんは、考えた末に、部屋にあった
「松ぼっくり」と「電球」を組み合わせた絵を描いて提出した。
すると、しばらく間をおいて、今度はその絵を陶芸でつくるように言われた。
「びっくりしました。私は器をつくる気満々だったので(笑)
けれども今まで考えもしなかったことが楽しかったし、
視野が広がった気がしました」

固定観念が取り払われ、表現する自由を実感した瞬間。
渡辺さんの「つくる」ことの原点は、ここにあるような気がした。


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現在、昼間は実家で営む織物会社で働き
その後を作陶の時間に当てている。
自宅の庭に建てたプレハブが、彼女のスタジオだ。
「大変だけど、恵まれた環境だなと
今になってようやく思えるようになりました」

「理屈ぬきで楽しめるもの、その場の空気に包まれるというか
『あ、この人の空気の中に入っちゃった』そんな風に思える作品を
つくっていきたい」と話す貴子さん。

彼女のつくり出す作品は、これからも
触れた人、身を置いた人を、優しい空気で包み込んでくれるだろう。

作陶家・渡辺貴子さん「つくり続ける中に見つけた幸せ」
BonAppetit-5(2008年12月発行)より改変


text by Tomomi Igarashi

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by bonappetit2007 | 2011-07-01 18:10 | 作家

AUTTAA

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「AUTTAAというユニット名には、どんな意味があるんですか?」
今春、DMを手にして展示会場を訪れた際も、
いったい何と発音してよいのか分からなかった名前の不思議。
聞いてみると、新井さんと青野さんの二人は顔を見合わせて
「ああ、やっぱり」という表情で照れたように笑った。

「“アウッタ”は、フィンランド語で、助ける、手伝う、という意味です。
私たちが作った革小物を、お客様に使っていただくことで
自分だけの品に仕上げてもらいたい。
使い込むうちに革が飴色に変化したり、くたっとしたり、
そういう過程をお手伝いして下さいませんか?という願いを込めています」
なるほど……。

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二人が出会ったのは、靴つくりの専門学校だった。
新井さんは、アパレルの勉強をするうち「靴」に自分の興味が集中したという。
 「限られた大きさの中で、余計なものを削ぎ落としたデザインと
機能を備えた靴を作りたいと思いました。
時間を経て素材が変化していくような、そんなシンプルなものが好きなんです」

 一方、青野さんは昔から小物作りが好きで、
作っては友達にプレゼントしていたのだそう。
アパレルを勉強するため、イギリスに渡った経験もある。
 「素材として、革が一番面白いと思いました。なにより強い。
切りっぱなしでも丈夫ですし、磨けば光る素材。
私は、モノ作りで生きていこうと思っていましたから、
色んなことを学んで、辿り着いたのが革小物でした」

シンプルが一番!そして、使い込んだ革の魅力と愛着、
これがAUTTAAの商品コンセプトになった。

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09年7月から本格的に活動を始めた2人は、
ワークショップや手づくり市、展示会など、
積極的に前へ前へと動いている。
今回、ボナとの商品開発にあたっても、じっくりと話し合い、
常に誠実に言葉を受け止めて新しい提案をして下さった。
 「自分に足りない部分を補ってくれるパートナーがいる。
そのことで、もの作りに対するモチベーションも上がったし、
AUTTAAのテイストや、自分たちが感じたことを
モノに落とし込めているだろうか? と、いつも考えるようになりました」

2人の夢はAUTTAAらしい空間をもって、お客様と接すること。
逞しく、柔軟な発想の彼女たちなら、そう遠くない将来、
夢に向かって道も広がっていくに違いない。

text by Fumie Nagai

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by bonappetit2007 | 2010-06-01 18:24 | 作家

Shio

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アクセサリーを前にして、
あれこれ迷いながら自分に似合う「ひとつ」を選んでいるとき、
女性は幸せだなぁと思う。
輝く石や金属、ガラスにビーズ、革etc。
使用される素材は様々で、
創り手によってカタチも自在なアクセサリーは、
身につける楽しみと発見する楽しみの両方がある。

Shioさんがつくるピアスを知人が購入したときのこと、
それは2年も前のことだけれど、
そのゆったりとした時間を今でもはっきりと憶えている。
接客する彼女の落ち着いた物腰と、
自由な曲線を描く作品がミスマッチのようでいて、
実はしっかりと同じ根を持つ植物みたいだ……と、
第三者の私は不思議な関心を持ったのだった。

鋳金(ちゅうきん=溶かした金属を型に流し込み成形してつくるもの)の
面白さについてShioさんに伺った。

「原型をロウや粘土でつくるので、
自分が考えたカタチのままが作品として出来上がってくるのが面白い。
頭の中のひらめき→→→完成形が見える!
っていうストレートなプロセスが合っているんですね。
性格がせっかちなのかもしれません」(笑)

美大時代から自分の手で
何かを創ることが好きだったというShioさんの作品には、
植物や動物をモチーフにしたものが多い。
ときには山でスケッチして、様々な作品の素を集めるのだという。

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「カタチと同時に、金属の色も楽しんでもらいたい。
シルバーやゴールドの定番はもちろん、
真鋳やブロンズも、それぞれに表情がありますから」

色の感覚もまた、
マイペースに観察収集して蓄積した、作家Shioさんならではだ。

「普段、あまりアクセサリーをつけない方が手にとって下さったり、
何かの記念にとお買い求め頂いたりと、人との出会いも楽しい。
何より、お客様に喜んで頂けるものをお届けできれば、
それが一番嬉しいです」

自分が見たいもの、こんなものがあったらいいなぁ……を
実際に創れる幸せ。
そして思い通りに生まれた作品をピカピカに磨いているときが
最高だと語る彼女にとって、それは我が子同然なのだろう。
Shioさんが、ひとつひとつ愛情を込めて磨いた作品たちは、
今日も静かに嫁ぎ先を待っている。

text by Fumie Nagai

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by bonappetit2007 | 2010-03-05 18:31 | 作家

ateliers PENELOPE ②

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『PENELOPE―ペネロープ』
ギリシャ神話に登場する女性の名前。
その姿は優美でありながら、
内に秘めた信念を貫く強さを持つ女性であったという。

使う人を限定しない、万人に愛されるデザインとクオリティのバッグ。
ateliers PENELOPEのデザイナーであり、
オーナーの唐澤さんは、客層の幅が広いほど嬉しいという。

「年齢も性別も関係なく、多くの人に使ってもらって、
その結果をつくり手として受け入れたい」
という姿勢は、モノと情報が溢れる時代にあって驚くほど潔いと思う。

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「今は何でも同じ方向へ向かっていて、
普通のモノが手に入らなくなってしまった。
私は本当に必要な、普通のモノをつくり続けていきたいと思います」

言いえて妙。
売れることを追求し、誰かの真似をくり返した結果、
いつの間にか今は原型にこそ希少価値が存在するような気がする。

唐澤さんは、いつもこの仕事をする意味を考え続けてきた。
やり始めた以上は成し遂げたい……。
そして、自分にはこれしかないと覚悟したとき、
自らの心を落ち着ける場所が
アトリエで主人を待つミシンの前になった。
凛として仕事と向き合う唐澤さんは、
店名と同じ、神話の中のPENELOPEのようだと思う。


        ateliers PENELOPE「息する空間でつくり続けたい」
             BonAppetit-2(2007年10月発行)より抜粋

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ある雑誌に掲載されていたバッグに一目惚れをした。
モデルさんの傍らに、きりっと佇んでいたのが
ateliers PENELOPEのバッグ。
変な話だけれど、私の物欲は人並み以上だと思っている。
でも、ファッション誌で見つけた商品が
どこのものか調べて買いに走る!なんてことは一度もなかった。

その私が、初めてページの片隅に
小さく書かれた店名だけを頼りに場所を探し、
営業時間を確かめ、いざペネロープへと向かったのが2年前。
代官山のマンションの一室から、
現在は中目黒へと居を移したが、
いつも小さな驚きを与えてくれるバッグはもちろんのこと、
唐澤さんが醸す心地良さと、スタッフの柔和な笑顔は何ら変わらない。

text by Fumie Nagai

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by bonappetit2007 | 2009-10-01 18:03 | 作家

Landscape Products Co.,Ltd.

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真っ暗な部屋の中で、スイッチを入れると
ひんやりとしたコンクリート素材の家の中に灯りがともり
くりぬき窓からすっと光伸びる。

「夜の山道で迷った時、遠くに家が見えて
そこから灯りがもれている…そんなイメージでつくったんです」

家型照明House to Houseを生み出した
ランドスケーププロダクツのデザイナー江藤公昭さんが話してくれた。

素材に使ったコンクリートは、
すべすべと滑らか過ぎず、かといってゴツゴツもしない
ほどよい質感を出すために、何度も試作を重ねたという。
着想時には丸型だった窓は、試作段階で四角に変更するなど
光の漏れる角度にも気を払っているという。

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「機能的な照明というより、心に働きかけるような照明にしたかった」
と江藤さんは言うが、実際に暗闇の中で
House to Houseの光を見つめていると
いかに光を機能的にしか捉えていなかったか気づかされる。
普段は意識することのない、光へのありがたみすら感じるのだが、
その秘密は、どうやら家型にあるようだ。

「世界中どこへ行ってもこの家型は共通。
ぼくたち人間のDNAに組み込まれているかのように、
家型というフォルムには、きっと意味があるのだと思う。
この形を見れば誰でもほっとするし、安らぎを感じられるんじゃないかな」

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「廃材を利用して何かできないか…」
それが、House Blockが生まれるきっかけとなった。

住宅などを作る際に余る廃材を家型に切り
屋根の斜面に色を付け、玩具にするという発想。
当然エコではあるが、かといってそれだけが売りではない。

広島の家族経営の工場で、一つ一つ手塗りしているという屋根の色には
バターミルクペイントという天然の水性塗料を使用。
その鮮やかな色調は、どこか外国の家並みを思わせる。
素材には米松を使用しているため、使うほどに飴色になっていく。
商品そのものの魅力が何にも勝るのだ。



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House Blockの制作に携わった池田陽介さん曰く

「ランドスケーププロダクツの活動のコンセプトに
“マン・メイド・オブジェクトMan-Made Object”(※)というのがあります。
人間が作り上げた無作為の美のことでもあるのですが、
House Blockにもその思想を生かしています」

実際、House Blockを使ってみると
(撮影のため、大人3名で使用!)
3種類の高さがあることで、遊び方にバリエーションが生まれる。
ブロックを縦横斜めに回転させ、頭もひねり…
大人3人で城を作ることに、いつの間にか夢中になっていた。

マン・メイド・オブジェクトには
使い方を限定しない、自由な余白があるのかもしれない。

text by Tomomi Igarashi

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by bonappetit2007 | 2009-09-02 17:56 | 作家

陶工房 日々器

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高尾駅からバスに揺られて30分。
深い緑と清流の先に、築100年の古民家がある。
中田麻子さんが、灯油窯を持ち、工房を持ちたい一念で
探し当て、辿り着いた場所が、ここだった。

「どうしても灯油釜が欲しかったんです。
でも、煙を上げる本格的な窯をもつには住宅街では無理ですから…」

淡々と彼女は話すが、
女性がたった一人で住むには、かなりの勇気が必要な場所。
今でこそ旦那様と山暮らしを楽しみつつの作陶生活だが、
その大きな最初の一歩、飛び込む勇気には驚くばかりだ。


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師事していた先生が灯油窯を使っていたこともあり、
灯油の量と風量を調節しながら焼き上げる器の、
その一点一点違う姿に魅せられたことがコトの始まりだった。

本焼きの温度は1250度以上にもなり、煙がもうもうと上がる。
温度の具合を知るには、炎と間近に接することが必要不可欠。
大家さんが建ててくれたという窯小屋の中は、
夏場は眩暈がするほど高温になる。

……それでも、本格的に自分の窯で、自分の陶芸がやりたかった。
「陶工房 日々器」として窯開きをしてから、気付けばもう3年。


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中田さんの器は、
「日々器」の名の通り、使ってみて良さが分かる器だ。
彼女が目指す器の在り方が、まさにそれであり、
自分が使い易いと思える器を創り続けているという証だろう。

実際に、私がこの春に購入した三点の器は、
今夏までほぼ毎日食卓で活躍しているほど
使いやすくて飽きることがない…。
菊練りと呼ばれる土の中の空気を抜く作業から始まる工程は、
ざっと10を越えるが、
やはり最後の本焼きには細心の注意を払うという。

「季節や温度湿度によって
窯の温度の上がり方が違うから、毎回統計をとっている」

そのノートを見せて頂くと、
細かにそのときの状況が書き込まれている。
日々の研究と、土と窯との格闘あってこそ生まれる器は、
作陶家にとって子供も同然なのだ。

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灯油窯の良さが際立つ、
同じ窯で焼いたのに全く表情が違う「花器」と、
意図せず不思議な模様が浮かび上がる器は、
二度と同じものは創れない。

彼女の創作は、陶芸体験で訪れる人たちと、
彼女の器を求めて遠くから足を運んでくれるお客さま、
見守ってくれる緑の中のご近所さん…
人との出会いによって、日々磨かれているようだ。

text by Fumie Nagai


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by bonappetit2007 | 2009-08-25 17:04 | 作家

安西ようこ

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安西ようこさんが使っているミシンは、
今ではなかなか手に入れるのが難しい足踏みミシンだ。
それまでは古いコンピューターミシンを使い
バッグや、鍋つかみなど比較的縫いやすいものを作っていたが、
「もっと厚手のものを縫える職業用のものがほしい…」と
理想の伴侶を探す日々がはじまった。
そして見つけた念願のミシンは、まさに質実剛健!

ようこさん曰く「直線縫いだけのマジメなミシン」は、
購入してから使えるまでに半年以上もかかったというが、
おかげで厚手の生地も縫えるようになり、
作品の幅はぐんと広がった。

ルームシューズを作り始めたのもこの頃からだ。
「汚れたら靴下のように洗濯機でジャブジャブ洗って、
いつも清潔なものを履きたい」
そんな気持ちからリネンの部屋ばきを思い付いたという。

以来、作ったものを履き、洗い、履きたおしてはまた作り…
そんな風にして一足一足作り続けてきた。
その様子は、BonAppetit-4の写真日記「日々コレ好日」に
ようこさんが登場した際、日常の一コマとして掲載した。


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毎日を紹介する「日々コレ好日」の中で
ようこさんと旦那さま、猫のチャオさんの2人と一匹の暮らしぶりは、
生活すること、それ自体を楽しむ工夫に満ちていた。
晴れた日にウクレレを弾きながらの外ご飯。
黒糖焼酎で梅酒づくり。
友人へのプレゼント。
ルームシューズも、
自分の手で生活を作り出す中から生まれたものだ。

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今回のルームシューズは、
揃いの生地のケースに入れて持ち歩くことができるので
旅先のホテルや飛行機の機内でも重宝するだろう。
しかし、ようこさんは、
「日常生活の中でも、どんどん履いて使ってほしい」
という。

今後、モノづくりをしていく際の心構えについても
このように話してくれた。
「カタチは一緒だけど、縫いなどの表情が違う一点しかないもの。
だからと言って特別過ぎず、普段の生活にも馴染む
ふつうのものを、きちんと作っていきたいです」

自分たちの生活を起点として、そこから得た発想を
少しずつカタチにしていく、ようこさんのモノづくり。
リズムよくミシンを踏んで生まれてくる作品を
耳をすまして、じっと待つのが楽しみだ。


text by Tomomi Igarashi

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by bonappetit2007 | 2009-07-14 16:56 | 作家

中村香

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ある舞台を観て美術の世界に進みたいと思った…
という中村香は、美大に進学し、油・アクリル・版画など、
今まで色んな表現方法を学んできた。
昨年は、自身初の個展を開催するまでになったが、
それでも「自分にしか出来ない、自分らしい表現方法は何か」
を模索し続けていた。

彼女と出会ったのは、ちょうどそんな頃だった。
銀座の個展会場で、彼女は柱に隠れるように佇み、
自分が描いた数点の絵の中に同化していた。
しかしそれとは対照的に、白い壁に並べられた作品は
一言では表せないほどの歩幅を感じさせたし、
添えられた「君 想う」という作品名がいつまでも頭に残った。

まだ「無」なのかもしれないけど、
内に秘めた何かが今にも噴出しそうな…
そんな強い意志を感じて、2時間後には会場に逆戻り、
「取材させてほしい」と申し入れた。
そのときのキョトンとした魅力的な彼女の顔は今でも忘れられない。

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始まった取材で、案の定、中村香は
言われるまま書かれるままで終わるような
浮き足立ったところはなかった。
床にペタンと座って絵を描く自由なスタイル、
机上にある古びた「百人一首」の本、
集められた絵の具や紙、布や色々な素材、
その全てには、今の彼女に繋がる意味があった。
まるで頭の中を泳ぐように揺れる素材やデザイン、
色と言葉の感覚は、やがて「コラージュ」となって集約され、
BonAppetit-5の表紙を飾った中村香の作品は評判を博した。

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クリスマス、バレンタイン…
彼女は幾度か私にカードを贈ってくれた。
色も質感も違う紙を組み合わせ、
和紙をちぎり、布にレース、糸、アクリル絵の具…
それは駆使する素材が増えるほど、
自分らしさを自由に表現するのを
愉しんでいるかのようでもあったし、
心に響き伝わる作品は贈り贈られるカードに相応しいと思った。

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今回、彼女が創ったLa seule carteは、
数多のカードにある不足感を払拭する意味も込めている。
「ちょっと特別感があって、
伝えたいことが自在に書き綴れる新しいカタチは?」
「何人かで一緒に言葉を贈りたいときにも
使えるようなカードがほしい!」

彼女は言う。
「一つ一つに想いを込めているので、
同じデザインであっても全く同じに作りたくはないし、作れないので、
唯一のものとして大切な人に贈って喜んでもらえるものを
作りたいと思う」

そして出来上がったカードは、
いつまでも記憶に残るだろうカタチになった。
彼女が創ったカードに贈り手の想いが重なって出来上がる、
小さな手紙本のように…。
中村香が創作を続ける理由が、理解できたような気がする。

text by Fumie Nagai

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*La seule carte(ラ・スール・カルト)
 
 = たった一つのカード。同じものは二つとない一点ものです。
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by bonappetit2007 | 2009-06-26 16:13 | 作家