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#55 スゴイ人が語る、ことばのちから

河井寛次郎(1890-1966)という名前を聞いたことがありますか?
『柳宗悦、濱田庄司らと共に民藝運動の中心的役割を果たした陶芸家』
というのが間違いない解説ですが、実はとてもチャーミングな方だったようです。

先日、横浜美術館で行われた「京都に息づく美とデザインに学ぶ」にて、
河井寛次郎記念館の学芸員で実孫でもある、
鷺珠江さんのお話を伺う機会がありました。

「科学者の目と詩人の心をもつ人」であったいう祖父が、孫に日々かけた言葉は

「今日は柿の種だね」
「今日はメロンの種だね」のいずれか。

柿の種=元気(硬くてしっかりしている)、
メロンの種=元気がない(弱弱しい)

という意味だったそうです。
鷺さんは、大人と子どもの会話の中にも
異種のモノを結びつけることの楽しさを教えてくれる、
そんなお祖父ちゃんが大好きだったと言います。

一方で「人が人をランクづけることのナンセンスを感じていた」(鷺さん談)
河井寛次郎は、数々の賞や文化勲章、人間国宝の推挙を辞退します。
生涯で受けた賞は、全幅の信頼をおく友人が出品した、
昭和12年のパリ万博と、32年のミラノトリエンナーレのグランプリのみ。

当時のインタビューに
「賞はモノが貰うもの。あれは友人が出品しただけ、ただそれだけのことです」
と答え、
「自分は、ただ形のものが好きなんです」と語るスゴイ人は、
本当に自分らしい素敵な生き方をした方なのだと思います。

text by Fumie Nagai

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by bonappetit2007 | 2007-11-24 22:33 | 編集日記
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